統合失調症をドパミン受容体遮断薬で治療している際に、高プロラクチン血症に対してドパミン受容体作動薬を投与するか否か。抗精神病薬に、ブロモクリプチン(パーロデル)を併用してよいのか。ここ数日、そんなことをアレコレと考えていました。
パーロデルの添付文書を見ていて、用量を見てみました。
・パーキンソン症候群:15.0~22.5mgが維持量
・高プロラクチン血症などのホルモン異常:7.5mgまで
パーキンソン症候群に対しては、高プロラクチン血症の3倍くらい使うようです。これは何故でしょう。それだけパーキンソン症候群が治しづらい疾患だから?それとも何か他の理由でしょうか。
そして統合失調症の治療中、ブロモクリプチンを併用すると増悪するかもしれないという考え。私もそう考えてました。でも増悪した人を診たことが、少なくとも私自身はありません。
それは「脳血管関門」がキーワードではないかと人に聞いたことがあります。どういうことでしょう。
血液中にあるもの全てが脳に達するわけではありません。血液の中にあるもののうち、脳血管関門を通過したものだけが脳に到達するんです。血液脳関門と言われることもあり、英語では「Blood-Brain Barrier」略して「BBB」。
このBBBをどんなものが通過するか。基本となる「分子量閾値説」によると、分子量が500以下のもの。実際にはさらに脂溶性かどうかやトランスポーターなどが関与しています。
そこで、最近使っている抗精神病薬や抗うつ薬の分子量を見ると……
【SSRIs/SNRI】 フルボキサミン 434 パロキセチン 374 セルトラリン 342 ミルナシプラン 282 【抗パーキンソン薬】 ビペリデン 347 トリヘキシフェニジル337 プロメタジン 320 |
【新規型抗精神病薬】 ペロスピロン 499 アリピプラゾロール 448 リスペリドン 410 クエチアピン 383 ブロナンセリン 367 オランザピン 312 |
当然、全て
300前後~400代。なるほど、
脳まで届くわけです。
そして、ブロモクリプチンの分子量は750……ってデカッ!分子が大きいんです。脂溶性にしても、かなりBBBを通りづらい大きさ。ちょっと飲んだくらいじゃ中枢神経まで届かないハズ。これだからパーキンソン症候群を治療の際には多くの量が必要なのかも。これでブロモクリプチンの併用で増悪する統合失調症をあまり見たことがないのも分かる気がします。
そして、プロラクチンについてはどうか。視床下部からはドパミンが血管の中に放出されて、これが下垂体で抑制的に作用します。このときBBBを通らず下垂体に到達できるんです。血液中にブロモクリプチンがあれば下垂体には簡単に届くんです。だから、少量でも高プロラクチン血症の治療ができるのでしょう。
文献的に見てみると、1983年にLundbergらがPETによる研究で、ブロモクリプチンが大脳半球よりも下垂体に多く取り込まれていたと報告しています。なるほど。
まとめると、服用したブロモクリプチンは、簡単に下垂体に届いて、中枢神経には届きづらいということ。ですから高プロラクチン血症を少量のブロモクリプチンの併用で治療しても、精神への作用はわずかと考えられます。
統合失調症の治療で生じた高プロラクチン血症。第一選択薬を避けたり、合っていた抗精神病薬を変更したりするよりは、少量のブロモクリプチンを併用した方がはるかにプラスでしょう。もしも増悪を心配するのであれば、抗精神病薬をわずかに増量しておけば、中枢神経系に対する「作動」の作用は相殺されることでしょう。
統合失調症の治療中の高プロラクチン血症、恐れるに足らずですね。調べてみて納得しました。パーロデル、積極的に使いたいと思います(^-^)
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