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2008年2月28日 (木)

ブロナンセリンの製造承認

 新規抗精神病薬として大日本住友製薬でブロナンセリンが開発され、商品名ロナセンとして製造承認が降りたとのこと。

 抗精神病薬としてSDAセロトニンドパミン・アンタゴニストがあります。これは、ドパミン受容体よりも強くセロトニン受容体を遮断することで副作用であるEPSを抑えることに成功したもの。

 しかし、ブロナンセリンはSDAではなく「DSA」とのこと。って、こんな言葉は会社側が勝手に作った言葉ですね(^-^;

 セロトニン受容体よりも強くドパミン受容体を遮断するとのこと。データを見せてもらうと「ものすごくドパミン!!(・_・;」な薬でした。文字で言うなら……

DSA

……ってな感じ。(この表記はあくまでイメージですw)

 しかし、それでもハロペリドールなどに比べて、比較的EPSは少ないのではないかと言います。う~ん、全く理屈になってません。理屈だけだとEPSは多そうなものなのに(-_-)

 あと、MRさんから教えてもらった小さな情報としては……

 そして、脂溶性であり食後に服用する必要があるとのこと。じゃないとガクンと血中濃度が下がるそうな。眠前に飲めないのは残念。

 リスペリドン換算4対1だとか。8mgを2回/日に分けて開始し8~16mgを維持量とし、1日24mgまで。

 発売は2008年5月頃になる見込み。先に申し上げておきますが、新しく発売されたからといって私は飛びつきません。十分にメリットが分からない薬を、興味だけで処方することは慎むべき行為。
 まずは論文などでデータを見て、患者さんにとって有益と判断してからにしたいと思います。となると、まずは他剤で治療が難渋している方に提案するところからになるでしょうか。

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2008年2月24日 (日)

自分の万能感を疑え

 以前、統合失調症薬物治療多剤併用が行われました。今でも一部で行われています。「こっちの薬で幻覚・妄想を抑え、あっちの薬で衝動性を抑えつつ、そっちの薬で賦活する」ってな具合です。私の身の周りでは「サジ加減」なんて表現が用いられます。この手の調整は医師が敏感に患者の変化を感じ取ろうと試み各薬剤の特性について信念を抱き、処方箋に向かうのです。その一生懸命な姿勢は素晴らしいものです。

 しかし、私はそれを否定します。多剤併用を否定します。これは私だけでなく、今では一般的に否定されています。この様な処方は医師の万能感に基づくものであり、医師ひとりがそんなに万能なハズがありません。自分自身が医師ですが「医師=スーパーマン説」を否定します。

「薬の特性について、医師一人が感じ取れることは嘘かも知れない」
「医師が語る薬の特性は迷信かもしれない」

 そう常に自分自身に言い聞かせるように心がけてます。

 処方していて、目の前の患者さんにいろんな変化が起きます。しかし、それは1)そう見えただけかもしれませんし、2)たまたまかもしれません

 

Glasses_2  1)医師の眼は曇ってます
 「効け!」と思って処方した薬は効いてくれないと困ります。しかし、そんなことは実際に起こります。薬が効かないと、無意識下に葛藤が生じます。その葛藤を解決するため、効いたと信じることにしがちです(それも無意識下で)。そして、それを信じてしまいます。
 違うパターンも考えられます。「効け!」と思って、その患者さんが効かないタイプだったとき、その失望は大きいもの。「効かなかったぁぁっ!(>_<」という印象は非常に強く残り、その薬を「効かない薬剤」と分類してしまうかもしれません。

 その他にも、医師は様々な感情を持って処方箋に向かいます。そして、感情は無意識下で医者の診る目を曇らせます。医師も人間なのです。私も、です。

 

Dice 2)「たまたま」に踊らされます
 処方をしていると、目の前の患者さんに様々な変化が生じます。例えば……

 ルーランを処方して、患者さんが激太りしたことがあります。しばらく「ルーランは太る薬なんじゃないか」と思っていたことがありました。しかし、データとして、ルーランが特に太りやすい薬ということはありません。リスクで言えばMARTAの方がよっぽど上のハズ。その患者さんが「たまたま」ルーランで太りやすい人だったのでしょう。

 最近ではジェイゾロフトで患者さんが攻撃的になったことがありました。以前の私だったら「ジェイゾロフトは患者さんを『煽る』傾向があるのか」と思い込んだところでしょう。しかし、アクティベーション症候群どの抗うつ薬にだって起こること。ジェイゾロフトで自殺関連事象が少ないことを思えば、むしろアクチベーション症候群のリスクが少ないことすら考えられます。

 医師が持つ信念は、自分(あるいは知っている医者)目の前の患者さんに「たまたま」起きた変化がデータの元なのです。

 

 知らないうちに眼が曇り偶然に踊らされる医者は万能ではありません。薬の特性について、医師一人が感じ取れることは嘘かもしれないんです。医師が語る薬の特性は迷信なのかもしれません。自分自身の感覚も信じすぎないように気をつけてます。

 自分としては患者さんを良くしたつもりでも、患者さんやご家族意見・感想を求めるようにしています。「僕から見て良くなった様に思っちゃうけど、実際にはどうなんだろ」といった具合に。

 そして、患者さんに変化があっても、それがデータとしてどうなのかを製薬会社の人(MRさん)に聞くこともあります。目の前の数人や数十人の患者さんよりも、もっと数百人や数千人(場合によっては数万人)を元にしたデータで語られた論文を参考にするようにしています。

 

 このプシコ・メモメモはそんな姿勢で綴られています。薬による患者さんの変化について書くこともありますが、それは論文や本での根拠があるときに限るようにと思っています。なるべく一個人の意見で書くのではなく、一般的にも良しとされていることを元に書くように気をつけています。

 さて、これをお読みになった皆さんはどのように感じたでしょうか。医師の中には不快に思った方がいらっしゃったかも知れません。それがすごく不安です。ただ、私達=医師の万能感疑問だけでも感じて頂けたら幸いですm(_ _)m

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2008年2月22日 (金)

目指せ単剤化 partゼロ

目指せ単剤化part1」の続きとして「目指せ単剤化part2」を書きましたが、今回はその前の話。

2006年10月の患者リストを引っ張り出し、そこに記されている薬剤の種類をカウントしてみました。

2006tanzai_2

1剤:11.1% 2剤:51.1% 3剤:22.2% 4剤:13.3% 5剤:2.2%

うわぁ、たったの11%。従来型から新規型へと漸減・漸増法で切り替え始めている人がいたので、そのため低まっているハズ。それにしたって低かったなぁ(-_-;

この間も報告したように、先月の時点では

2007jantanzai_2

1剤:56.8% 2剤:25.0% 3剤:18.1%

この1年3か月ぐらいで随分と単剤化が進んだものです。まだ数字にしてませんが、今月はもう少し上がってるハズ。さらに頑張ってみますo(・_・)o

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2008年2月17日 (日)

セロトニン受容体のサブタイプ

精神疾患ではしばしばセロトニンが登場します。そして、の効果を語る上でもセロトニンがしばしば出てきます。セロトニンを受ける「セロトニン受容体」には様々なサブタイプが存在し、各々の作用は異なっています。

5-HT1A:
 不安・抑うつに関係しています。1A2抑制する作用があります。薬で言えば、タンドスピロン(セディール)は1A作動薬として抗不安作用があります。
 セロトニン症候群はこの1Aが関係していると考えられています。

5-HT1B/1D:
 片頭痛に関係します。偏頭痛治療薬のエレトリプタン(レルパックス)やスマトリプタン(イミグラン)は1B/1Dの刺激薬です。

5-HT2:
 不安・抑うつに関係しています。うつ病では、セロトニン量が少なく2感受性が亢進していると考えられています。
 新規抗精神病薬のSDA(リスペリドン、ペロスピロン)では、ドパミン2Aともにセロトニンの2が同時に遮断されます。これによりドパミンを遮断することに伴うEPSを少なくでき、陰性症状を改善さえるものと考えられています。ここで2Aとは書いたものの、多少は他の受容体も遮断すると思われ、さらに言えば、SSRIの様にセロトニントランスポーターの阻害作用も多少は存在するものと思われます。

5-HT3・4:
 嘔吐中枢や消化管の運動に関与しています。4海馬などに存在し、認知機能に関与しています。

5-HT6:
 認知機能に関与していると考えられています。

5-HT7:
 サーカディアンリズムなどに関与しているものと考えられます。

SSRI/SNRIは、サブタイプには直接関係ありません。セロトニンがトランスポーターで取り込まれてしまうのを防ぎ、シナプス間隙のセロトニン量を増やします。そして、抑うつや不安を改善させる効果が期待できます。

上記は中枢神経系を主に書いていますが、消化管や心筋、血小板などにも作用があり、その作用は様々です。しかし、専門外で責任もてないので割愛!

曖昧でよく把握しきれない点もありますし、おそらく詳しく分かっていない点もあるでしょうし、まだまだ分からないことだらけです。
それでも、以前に比べると分かるようになってきたかな(^-^)

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2008年2月13日 (水)

セロトニンとシナプス

以前の記事でセロトニンが話題になったので

精神薬理学エセンシャルズ第2版

をパラパラ開いてセロトニンのお勉強。まずは基本的なところから(・_・)

精神科領域ではしばしばセロトニン(Serotonin、5-ヒドロキシトリプタン、5-HTと略)が登場します。

このセロトニンは、うつ病・パニック・強迫神経症といった疾患に関係していると言われており、その治療薬SSRI/SNRIの最初の「S」はセロトニン。そして統合失調症の治療でも、SDA(リスペリドン、ペロスピロン)の「S」もセロトニン。

セロトニンは、神経細胞のセロトニン受容体にくっついて作用をします。そして、この受容体にもイロイロあります。

セロトニン受容体は7つのファミリーに分けられており、今のところ14のサブタイプが明らかになってます。

5-HT1 :1A/1B/1D/1E/1F
5-HT2 :2A/2B/2C
5-HT3
5-HT4
5-HT5 :5A/5B
5-HT6
5-HT7

Synapse_2 この受容体は神経系の様々な場所にあり、その作用もイロイロです。

神経細胞から神経細胞へと情報が伝えられるとき、その細胞の間には隙間があり、セロトニンを始めとした神経伝達物質が介在しています。ここは「シナプス」と呼ばれており、受容体は「シナプス」「シナプス」の2つに分けられます。

シナプスプレ・シナプス)というのは神経伝達物質を出す側についているもの。セロトニンであれば、1A1B、1D等はシナプス前に存在します。シナプス前(樹状突起)の1Aに作用すれば、セロトニン神経を通るインパルスの流れを遅くします。シナプス前(シナプス)の1B1Dに作用すれば、セロトニンの遊離が阻害されます。

シナプスポスト・シナプス)こそ、次の神経細胞で情報を待ち構え、次の神経細胞へと情報を伝えている存在。シナプス後には、それこそ様々な受容体が待ち構えており、シナプス前にあった1A、1B、1Dがシナプス後にも存在します。

そして、受容体に作用したセロトニンはシナプス前にある「セロトニン・トランスポーター」により細胞内に戻り、モノアミン酸化酵素(MAO)により分解されます。

まずは、そこまで(^-^)

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2008年2月 9日 (土)

本を病院に

130冊の本を寄付してみました。

私が勤めている病院では、病棟に本がありませんでした。特に私の担当している閉鎖病棟では、本の管理が困難だろうという推測から本が持ち込まれずにいました。個人の本も殆ど持ち込んでいませんでした。だから患者さんはテレビを見たりゴロゴロしたりボーッとして過ごしたり。

病棟に本があった方がいいんじゃないだろうか、と思っていました。一つの療法として「ビブリオセラビー読書療法)」なんてものもあるぐらいですから。

毎日、集団生活をする中で、本に没頭している間は一人きりになれます。単調な毎日、新しい感動や知識を得ることができます。心を豊かに育てる糧になることでしょう。

読書療法から読みあいへ / 村中李衣 著

というわけで、本を寄付してみました。外来に少しと病棟に沢山。近所の古本屋に行き、1冊10円でワゴンに並んでいる本をごっそり購入してきました。130冊で1300円。う~ん、安い!価格が10円でも、価値は10円よりずっとありそうなものばかり。

そのままにしておけば、誰にも買われずに古くなって捨てられてしまうのでしょう。ですから、本にとっても、病棟でもう一度読んでもらえるチャンスを得るという意味で良いのではないでしょうか。

殺人や暴力などが強調されているものは避けました。霊的なもの、過度に性的なものも避けてみました。小説エッセイ生活の知恵健康関連の本など。女子閉鎖病棟なので、女性向けの漫画も入れてみました。動物占いの本も入れてみましたw

さ~て、いったいどうなるのやら。たとえ無駄だったとしても1300円の話。でも、患者さんが役立ててくれたら嬉しいですね。しばらく見守ってみたいと思います(^-^)

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2008年2月 5日 (火)

サイン

昨日の日記でご報告したうつ病についての講演で、開始前に40枚以上の色紙サインをするように主催者から依頼されました。講演前の控え室で、積み上げられた色紙を前に、油性ペンでひたすらサイン。こんなにサインをしたのは初めてのこと。

「欲しがる人がいたとして、最大が40名程度ということかな。いったいどれだけ欲しがる人がいるものやら」……そんな風に思っていました。

ただ、講演をしてみて、ご来場頂いた皆さんの関心を引き、楽しんで、そしてよく学んで頂いた手応えはありました。日頃、分野こそ違えどステージ上に立つ機会が多い私としては、そんなことを感じるものです。

Sign_satoru_2  しかし今日、関係者からメールを頂いてびっくり。サイン色紙は取り合いになり、そのコピーを求める人もいたとか!(・_・;

私の講演に何かを感じ、そのサインに何かを感じて頂けた方がいらっしゃったのは、非常にありがたいことです。その気持ちに見合う様、精進を重ねなければいけないのでしょう。そんなことを、しみじみと感じてます。

すごく疲れたけど、行ってよかったかな(^-^)

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2008年2月 4日 (月)

うつ病の話をしました♪

Asikaga_3昨日は栃木県足利市で講演をさせて頂いてきました。足利市市議会議員の杉田つとむ先生の後援会が主催の会。……とは言っても、私自身は政治と無関係なんですけどね(^-^;

雪の中400名程のお客様にお越し頂きました。

  「うつ病」についての講演30分。パワーポイントを使いながらお話をさせて頂いたのは、とても良い機会でした。

Depre_pawapo今回のために資料を作りましたが、時間の関係から使わなかった分も合わせると、50分ぐらいの内容を用意できました。機会があれば、また講演をどこかでさせて頂きたいものです。

講演は好きですし、プレゼンテーション・演説に関心があります。この様な場は自分を磨くのにいいですね。そして、お客様には集中して楽しんで(?)学んで頂いた様でよかったよかった♪(^-^)

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2008年2月 1日 (金)

抗うつ薬で自殺率が減少

 自殺についてJ.John Mannを中心とした座談会の献で、張賢徳先生が抗うつ薬自殺リスクについて面白いお話をしていました。

 日本の47都道府県の自殺率の変化と、SSRIの処方量の相関を調べてみたとのこと。すると、SSRIの処方量が多い県では自殺率が減少しているた、とのこと。

Stopsuicide21  以前から抗うつ薬が自殺行動を誘発するのではないか、との指摘がありました。実際、治療初期には気をつけるべきなのは当然のこと。しかし、うつ病を放置すればそれこそ自殺リスクは上昇します。適切に抗うつ薬を使って治療することが大切、というお話ですね。

 当然、自殺リスクを頭に入れた薬物選択を考えるべきでしょう。となると優先順位が高くなるのがミルナシプラン(トレドミン)とセルトラリン(ジェイゾロフト)でしょうか。

関連する記事として「SSRIと若年者の自殺リスク」がありますので、ご参考まで。

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