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2008年6月26日 (木)

同調理論

 診療は、患者さんに対して病気と治療についてプレゼンテーションすることの繰り返しです。そのとき、正しいことを「言う」だけでは医者として足りないと思っています。きちんと正しい答えに「導く」ことが仕事だと思っています。そんな中、心理的なテクニックが有効なことがあります。

 心理のテクニックのひとつに「同調理論」があります。

 子どもを持つ周囲の人が子どもをに行かせていると、我が子にも塾へ通わせなきゃいけない気がします。皆が新しいゲーム機で遊び始めると、つい自分も購入を考えてしまいます。

 これを精神科の診療で応用するのは手かもしれません。

「統合失調症の患者さんは『皆さん』お薬で飲んでますよ」
「良くなる患者さんは『皆さん』薬物治療を続けてますよ」

 統合失調症を勧めるのは当たり前のこと。その際の言葉をちょっと意識するだけで、その言葉の持つが変わるかもしれません。

 リスクは無いと言っていいでしょう。そしてアドヒアランスの改善というベネフィットが期待できます。

 これから、診療場面で意識してみようかな(^-^)

 当サイトで他には「好意の返報性」と「2択の提示」についても記事を書いてますのでご参考まで(^-^/

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2008年6月23日 (月)

○○っぽい

いつだったか、後輩の医者にこんなことを言われました。

「さとる先生って、精神科医っぽいですよね」

えへへ、そんな感じがするのか。精神科医っぽい感じするかな(^-^)

……ん?ちょっと待てよ?

っぽい」って言うけど、精神科医そのものだよ(^-^;

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2008年6月20日 (金)

アルコールの離脱症状

アルコール依存症では、酒を断ったとき離脱症状が出ます。その内容について文献を読んだのでメモメモ。

離脱症状として様々な症状が出ますが、その順番には一定の傾向があります。

Beer02_2 最初は自律神経症状からです。呼吸数の増加、そして吐き気や嘔吐、脈拍数の増加と血圧上昇、発熱発汗。これらは、この順で出る傾向があります。

そして、不安焦燥

さらに軽度の意識障害に過活動が加わったような、せん妄が生じます。

そして、幻視幻聴などの幻覚が生じます。

この流れを把握しておくと、患者さんが断酒を試みた際に役立つハズ。「●●が出たから、次は▲▲がでるかな」と様々な離脱症状の出現が予測できそうですね。

ちょっと、これを頭に入れてアルコール依存の患者さんを診てみようかな(^-^)

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2008年6月16日 (月)

水中毒

統合失調症の患者で水中毒に陥る人がいます。多量の飲水によるものです。多量というのも5リットルや10リットル、場合によってはそれ以上!

すると低ナトリウム血症に陥り、脳浮腫が生じ、傾眠昏睡けいれん等の症状が出現し、ひどい場合にはに至ることもあります。統合失調症では水の飲みすぎには要注意です。

「多飲水、水中毒と新しい抗精神病薬治療」という文献を読んでみました。

水中毒がなぜ起こるのでしょうか。

1) 精神病そのものの影響
急性増悪期や病状が遷延した重症症例に多飲水がしばしば生じることが指摘し、統合失調症自体と多飲水の関連の可能性が考えられます。

2) D2受容体遮断の影響
慢性的なD2受容体遮断アンジオテンシンIIが増加→視床下部の口渇中枢に影響→多飲水
という流れが考えられます。

3) 抗コリン作用の影響
低力価抗精神病薬抗パーキンソン薬抗コリン作用口渇をもたらし、多飲水をもたらしていることが考えられます。

これらから考えてみると、多飲水を減らすには……
1)統合失調症自体をしっかり治療
2)抗精神病薬を過度に用いず適切な量に調節する
3)なるべく抗コリン作用のある薬を使わない
……ということが考えられます。言うは易し、行うは難し(-_-;

 

また、多飲水に対する薬物療法として次のものが考えられるといいます。

・多飲水から水中毒に進展するのを防ぐのに、炭酸リチウムフェニトインには有効かもしれない
・多飲水を抑制するのにβ遮断薬ACE阻害薬等が有効かもしれない

いったい本当に有効かどうかは分かりません。しかし、水中毒は難治であることが多く、祈るような気持ちで処方する医者がいるのでしょうね。

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2008年6月12日 (木)

うつ病とビール酵母

よく、健康のためビール酵母を飲んでます。「ビール酵母」という商品名だったり、アサヒなら「エビオス」だったり。

含まれている栄養素を改めて見てみると「トリプトファン」の文字を発見。これは体の中では合成されず食事などで摂取しなければいけない「必須アミノ酸」の一種。そして、うつ病パニック障害などで欠乏していると考えられている「セロトニン」に素になるものです。

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トリプトファンが多く含まれている食品としてバナナが有名です。バナナ1本約200mgの中に含まれているトリプトファンは約20mg。キリンのビール酵母の栄養成分表示を見ると1日量(=30錠)の中に含まれるトリプトファンは26mgだとか。結構、いいのかもしれません。

うつ病ではセロトニンと同時に「ノルアドレナリン」が欠乏していると言われます。この素になるのが「フェニルアラニン」。これも含まれてます。(その量については、必要量や食事との比較などの数字が分からないので割愛)

一般的にビール酵母は健康に良いものですが、うつ病に於いてもオススメできそうですね。自分が飲むのも、体のためだけでなく「脳のため」だと思えばモチベーションがちょっと違ってくるかも?(^-^)

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2008年6月 8日 (日)

リス液と口腔粘膜

リスペリドン(リスパダール)の液剤を使うことがしばしばあります。頓服としてだけではなく、毎日決まって飲む薬として。錠剤に比べて薬効が高く、副作用であるEPSが少ないと言われています。

そのひとつの説として、口腔粘膜から吸収されるのではないか、というもの。口腔粘膜から吸収されれば、胃や腸や肝臓を通らずに血中に入って、それだけ早く脳まで到達します。そして、体内に入った最初に肝臓で代謝されないので、服用した薬がより有効に体内に入ります。さらに、最初の肝臓での代謝を免れることがEPSを減らすのかもしれません。

実は、発売もとのヤンセンファーマ自体は、口腔粘膜からの吸収を否定しています。おそらく錠剤との同等性があるとされるからこそ、新しい薬剤ではなく剤型が違うだけ、と発売を容易にした経過があるからなのでしょう。

しかし、明石土山病院の大下先生の論文を読むと、口腔粘膜からの吸収がやはりあるのではないかとあります。

粘膜から吸収される分子量は700以下。おして、リスペリドンの分子量は410ですからOK。

そして、薬物の非解離形の分配係数というものが402000だと良好に粘膜吸収されるとのこと。分配係数というのが何なのかは私にはなんとも(>_<;

リスペリドン液のpH2~4。その条件では分配係数を計算するとpH2.2で0.0128、pH4.1で0.146。吸収されない値です。ヤンセンファーマの言う通りです。

しかし、実際には口の中では唾液と混ざります。唾液のpHは6.8~7.5あるとか。リスペリドンの分配係数を見ると、pH6.1でもう9.58、pH8.0で555になるとか。pHが7前後だと40は軽く超えているハズ。唾液に混ざると粘膜吸収されると思われます。

あの苦味で唾液が出れば、すぐに中性になることでしょう。より効率を求めるのであれば、飲み込まずに口に馴染ませて待つとより良いのかもしれませんね。味が気にならない人にはオススメしてみたいと思います(^-^)

 

ちなみに、ネットであちこち見て、第二世代抗精神病薬の分子量を調べてみました(^-^/

リスペリドン410
ペロスピロン499
オランザピン312
クエチアピン383
アリピプラゾール448
ブロナンセリン367

だいたい400前後のものばかりですね(^-^)

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2008年6月 4日 (水)

内的現実と外的現実

 2月の下旬に、聞いた白波瀬丈一郎先生の境界型人格障害(Borderline Personality Disorder、以下BPD)についての講演で「外的現実」と「内的現実」という言葉が出てきました。

 その話では、BPDの患者さんの中では外的現実内的現実が大きく違ってしまい問題が生じるとのこと。

 例えば、外的現実では何も問題の無く友人と会話していたハズが、BPDの人の内的現実では友人が悪意を持って意地悪をしてきたように思っているようなことがあります。

 例えば、外的現実としては何とも思ってない担当医に、BPDの人の内的現実では担当医が怒っていると思い込んでいることがあります。

 外的現実として何も無いのに、本人の中では不幸な現実が展開されているのは非常に損なことです。BPDの持つ不健康な準拠枠、そして歪んだ認知によって生じることなのでしょう。

 歪んだ内的現実外的現実に合わせることは難しいことであり、これは超長期的にしかできないこと。まずは歪んだ内的現実に自ら気づいてもらうことが治療になる、とのお話でした。

 BPDの方に分かりやすいようにでも用意しておきたいとおろですかね(^-^)

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2008年6月 1日 (日)

7つの質問

コーチング入門」の中に7つのタイプの質問について書いてありました。

 医師、その中でも特に精神科医は、相手に質問することが多いもの。なんとなく質問を使い分けてるつもりでいます。しかし、体系立てて質問の種類性質を理解しておくと、より合目的的な問診ができそうですね(^-^)

1) Yes/Noで尋ねる質問

 事実関係相手の意思明確にするのに有用です。「薬は飲んだの?飲まなかったの?」「薬で治療する気はあるの?」といった具合。まさに明確

2) Yesを引き出す質問

 念押し確認の効果を狙います。「薬、ちゃんと飲めますよね?」といった具合。このバリエーションとして、許可を取る質問があります。「アドバイスを聞く準備はありますか?」や「ちょっと話していいですか?」と、相手に聞く姿勢を作ってもらう質問です。

3) Noを引き出す質問

 意図する方向に導くものです。「いくらあなたでも、毎日薬を飲むのは無理だよね?」 いや、無理かと聞かれたら無理ではないかな……みたいな?

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4) 自由回答意見を聞く質問

 基本的に、選択肢の無い質問=オープンクエスチョンが望ましいもの。本人なりの表現で気持ちを確認します。「薬について、どう思ってますか?」や「これから薬物治療をどうしたいですか?」といった具合。

5) 自由回答で事実を尋ねる質問

 事実について本人の表現で教えてもらいます。詳細を知るのに必要です。「薬を飲んでいて、この1ヶ月はどうでしたか?」といった具合。

6) 選択肢を選ぶ質問

 特にオープンクエスチョンは、相手にしてみると答えを考えるだけ負担がかかります。特に答えづらい質問では言葉につまってしまうもの。そんなときに選択肢を用いると有効です。「薬は増やしたい?同じにしたい?減らしたい?

7) 数字で答える質問

 スケーリングと呼ばれます。Yes/Noで終わらず、その程度を知ることができます。「薬を飲めたというけど、何パーセントぐらい飲めました?」や「薬が効いたと言いうのは、症状は何割くらいになりました?」といったもの。

 

 これを意識して使い分ければ、結構な質問名人になれそう?w コーチング、なかなか深いですね(^-^)

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