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2008年8月30日 (土)

オランザピンは太る?

統合失調症の治療薬であるオランザピン(ジプレキサ)は副作用として体重増加があります。もちろん全員が太る訳ではありません。

発売元のイーライ・リリー社の方からうかがった話や講演で聴いた話では、有害事象としての肥満報告は数%に過ぎないとのこと。ちょっとその「数%」の数字を忘れてしまいましが、私の臨床的な感覚とは大きく違う数字でびっくりしたことは覚えています。

なぜ、それだけのギャップが生じているのでしょうか。ひとつの説として……
副作用として報告される率 ≠ 体重増加が生じる率
……が、私としてはとても納得できます。

体重が増えても、患者さんが医者に言わなきゃ数に入りません。医者が聞いても、それが問題だと感じなければ数になりません。問題だと思っても製薬会社に報告しなきゃ数になりません。

じゃあ、実際にはどのくらいので肥満が起きるのでしょう。

福島で行われた多施設研究で、オランザピンを外来で142例に使用した報告を読みました。その論文の主旨としては、オランザピンが患者のQOLを改善する、というもの。私個人として興味深かったのは、投与前後の体重が測定されていた90例について書かれていた内容でした。

90例のうち……13例10kg以上の増加、27例5kg以上10kg未満の増加、19例5kg未満の増加、31例不変or減少……とのこと。
グラフにするとこんな感じ。

Zyp_01_3   

上のグラフが細分化されててピンと来ないので、あえて項目を減らしてみるとこんな感じ。

Zyp_02_2

太るか太らないか、と言われれば「太る」でしょうか。

計算機を叩くと
44.4%5kg以上の体重増加。
14.4%10kg以上、体重増加。
という数字。

もちろん、この論文は体重について扱うのがメインではないので、そればかりを見てもいけませんが「参考」にはなります。そして、オランザピン関連の他の論文を読んでも、近い数字です。

私なりの結論としては、オランザピンは体重増加を来しやすい薬であり、それは決して軽視できない、といもの。他人の体重について気にしない精神科医が結構いますが、とんでもないことです。

これを読む中に、オランザピンを服用している人もいらっしゃるかもしれません。実際に体重が増加してなければ、過剰に不安がる必要はありません。服薬を中断して統合失調症そのものが悪化することの方が何倍も危険です。主治医とよくご相談下さい。

オランザピンは統合失調症の治療効果自体は十分に良くEPSが少ない薬です。使うのであれば、長所をしっかりと引き出し、体重や血糖、コレステロールに注意して使いたいものですね(^-^)


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コメント

薬剤師です。オランザピン服用患者さんに投薬していて、明らかに以前よりポッチャリしたと思う方がいます。男女問わず、体重増加は気になる問題だと思いますが、体重に関してどのように質問すれば失礼にあたらないか、戸惑いを感じております。薬剤師としてどのように対応すれば患者さんの不安を解消してあげらるのでしょうか。

投稿: sayori | 2008年9月 9日 (火) 22:04

sayoriさん、こんにちは。ジプレキサを服用している方で、ぽっちゃりしてくる方がいらっしゃいますよね。処方していて、すごく悩むことがあります。
体重については、普通に「ところで、体重は何キロ?」と聞いています。薬剤師さんの立場だと切り口が難しいですよね(^-^;
服薬に伴うリスクを伝えると同時に、服薬指導の延長線として体重のグラフをつける用紙を用意するのも手かもしれません。って、僕も用意しようかな。
皆さんの意見・工夫もうかがいたいところですねo(^-^)o

投稿: satoru | 2008年9月11日 (木) 19:04

返信ありがとうございます。初めてジプレキサを服用する際に、体重増加に関する情報提供を行った方がいいということですね。始めに説明しておけば、その後の状況も聞きやすいですし。
体重のグラフですが、製薬会社が作成しているメタボリックシンドロームに関する患者さん向け指導箋に体重の折れ線グラフがついています。内科と精神科では領域が異なりますが、そういった指導箋も使えるかと思いました。薬局にもおいてあるので、活用してみます。

投稿: sayori | 2008年9月13日 (土) 13:54

sayoriさん、satoruさん、こんばんは。

オランザピンによる体重増加、しかも半数弱が5kg以上の増加の経験があるということは、本人も増加を自覚しやすいのかなと思います。(女性なら、なおさら)でも、本人の病状そのものによっては自身の体のことに無関心だったりすると気付かないうちに周りから「なんか太ったんじゃない?」なんて言われてショックを受けることもあるのでは。血糖増加も起こりやすい薬なのですから、SEチェック用の「オランザピン手帳」みたいなものをメーカーで作ってくれるといいですね。今のところはsayoriさんのおっしゃる内科などで使われる手帳を代用するといいですね。(≧∇≦)

投稿: cat×cat | 2008年9月13日 (土) 21:39

>sayoriさん
体重増加に関する情報提供はしておかないといけませんよね。訴訟リスクが高いのは、致命的なことと容姿に影響があること、と聞いたことがあります。肥満関連はアメリカでは訴訟になりますしね。
なるほど。内科関連の資料、機会あれば自分もチェックしてみたいと思います(・_・)

>cat x catさん
メーカー側も、体重増加から目をそむけようとせず向き合ってもらいたいものです。院内勉強会でLillyさんの学術の人と「体重増加が関心事なのに、なんでその話をしないんですか」と言って、反論されて険悪になったことがありました。反論しないで対処法を教えてくれたらいいのに。DMの専門家でもあるのですから。
ってなわけで、OLZ手帳作るべきですよに一票(^-^/

投稿: satoru | 2008年9月14日 (日) 11:16

この薬の効果と副作用についてまったく話さない医師がいます。
私は鬱病で、ジプレキサを処方されましたが、処方される際に、薬について医師から何の説明もありませんでした。そして約2年程この薬を使用して、糖尿病を31歳で発症しました。食事ではそれほど食べておらず、家族親戚に糖尿病が一人もいない、毎日80分歩いている、その私がなぜ糖尿病になったのか。この薬の副作用をインターネットで検索して初めて知りました。せめて副作用くらい説明して頂きたいと思います。大病院の先生方はしっかり説明していると思いますが、私の通っている小さなクリニックは、開業医の医師が一人しかいないので、いい加減でも通っているのでしょう。
誰かが開業医を管理指導監督しないとまずいと思います。

投稿: 糖尿病患者 | 2009年3月11日 (水) 15:05

こんにちは。ご指摘のこと、大きな問題だと感じています。

オランザピンによる代謝リスクをあまり重要視しない医者がいます。オランザピンは代謝リスク以外の面では、幻覚・妄想作用がある程度あり、鎮静作用がある程度あり、運動機能への副作用が出づらく、感情障害に効果があるとされていることから、安易に処方されることがあります。

しかし、私としては、急性期にだけ必要な鎮静効果については抗精神病薬以外に期待すべきだと思いますし、抗コリン作用が強いことはデメリットだと思いますし、何より代謝リスクは侮れません。第一選択薬とは言えない、ベストの処方とは言えないと私自身は考えております。

医師が代謝リスクを十分に理解していないことはありますし、医師が気づいていても十分に説明できていないこともあります。私自身も十分にできているかと言われると、自信がなくなりますが、これからもなるべく説明を心がけたいと思っております。

開業医のみならず、医学全体の問題かと。心身ともにどうぞお大事になさって下さいませ。

投稿: satoru | 2009年3月11日 (水) 17:56

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