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2009年2月24日 (火)

パーロデルで精神症状は出るか?

ブロモクリプチンパーロデル)について、旭川医大の千葉先生らが過去の国内文献における副作用の報告についてまとめたものを読んでみました。様々な起こりうる副作用について集計したもの。私は精神症状に注目してみました。すると「やっぱり」という内容。精神症状の報告は24例で、殆どがパーキンソン病

調べた文献のパーキンソン病についての報告が153例。精神症状の報告は22例。精神症状の報告がパーキンソン病ばかりに見られるのは……

・パーキンソン病ではこの薬を大量に使うため
疾患の特異性
併用薬の影響

……ではないかと筆者は考察していました。パーキンソン病とされる中には、幻覚を伴うレヴェィ小体型認知症が多く含まれるハズ。また、併用薬としてドパミンに作用する薬を使っていることが多いハズ。そんな中、パーキンソン病に対しては22.5mg/dayまでと大量の使用が認められています。この疾患を背景にブロモクリプチンを大量に使うと精神症状に影響があるのでしょう。

末端肥大症についての報告が149例。その中では精神症状の報告が約150例の報告の中で2例だけ。それも眠気と乗り物酔い様の不快感。どちらも統合失調症を増悪させる因子とは考えにくいもの。

そして、高・正常プロラクチン血症については計917例。この中に精神症状の報告はありませんでした

末端肥大症プロラクチン異常で使うブロモクリプチンの量は7.5mg/dayと少量。その量では殆ど精神症状は出ないようです。

疾患 一般的な
使用量
全例数 精神症状の
報告数
パーキンソン病 大量 153例中 22
末端肥大症 少量 149例中 2……といっても眠気と
乗り物酔い様の不快感
高PRL血症
正常PRL血症
少量

917例中

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以上のことからすると、統合失調症の治療中に使うブロモクリプチンはごく少量であることを考えると、やはりブロモクリプチンによる精神症状の増悪はさほど気にしなくて良いと推測されます。

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2009年2月17日 (火)

抗PRL血症にパーロデル(2/2)

統合失調症をドパミン受容体遮断薬で治療している際に、高プロラクチン血症に対してドパミン受容体作動薬を投与するか否か。抗精神病薬に、ブロモクリプチンパーロデル)を併用してよいのか。ここ数日、そんなことをアレコレと考えていました。

パーロデルの添付文書を見ていて、用量を見てみました。
パーキンソン症候群:15.0~22.5mgが維持量
高プロラクチン血症などのホルモン異常:7.5mgまで

パーキンソン症候群に対しては、高プロラクチン血症の3倍くらい使うようです。これは何故でしょう。それだけパーキンソン症候群が治しづらい疾患だから?それとも何か他の理由でしょうか。

そして統合失調症の治療中、ブロモクリプチンを併用すると増悪するかもしれないという考え。私もそう考えてました。でも増悪した人を診たことが、少なくとも私自身はありません。

それは「脳血管関門」がキーワードではないかと人に聞いたことがあります。どういうことでしょう。

血液中にあるもの全てがに達するわけではありません。血液の中にあるもののうち、脳血管関門を通過したものだけが脳に到達するんです。血液脳関門と言われることもあり、英語では「Blood-Brain Barrier」略して「BBB」。

Bbb このBBBをどんなものが通過するか。基本となる「分子量閾値説」によると、分子量500以下のもの。実際にはさらに脂溶性かどうかやトランスポーターなどが関与しています。

そこで、最近使っている抗精神病薬や抗うつ薬の分子量を見ると……

【SSRIs/SNRI】
フルボキサミン 434
パロキセチン 374
セルトラリン 342
ミルナシプラン 282
【抗パーキンソン薬】
ビペリデン 347
トリヘキシフェニジル337
プロメタジン 320
【新規型抗精神病薬】
ペロスピロン 499
アリピプラゾロール 448
リスペリドン 410
クエチアピン 383
ブロナンセリン 367
オランザピン 312
当然、全て300前後~400代。なるほど、まで届くわけです。

そして、ブロモクリプチンの分子量は750……ってデカッ!分子が大きいんです。脂溶性にしても、かなりBBBを通りづらい大きさ。ちょっと飲んだくらいじゃ中枢神経まで届かないハズ。これだからパーキンソン症候群を治療の際には多くの量が必要なのかも。これでブロモクリプチンの併用で増悪する統合失調症をあまり見たことがないのも分かる気がします。

そして、プロラクチンについてはどうか。視床下部からはドパミン血管の中に放出されて、これが下垂体で抑制的に作用します。このときBBBを通らず下垂体に到達できるんです。血液中ブロモクリプチンがあれば下垂体には簡単に届くんです。だから、少量でも高プロラクチン血症の治療ができるのでしょう。

文献的に見てみると、1983年にLundbergらがPETによる研究で、ブロモクリプチンが大脳半球よりも下垂体に多く取り込まれていたと報告しています。なるほど。

まとめると、服用したブロモクリプチンは、簡単に下垂体に届いて、中枢神経には届きづらいということ。ですから高プロラクチン血症を少量のブロモクリプチンの併用で治療しても、精神への作用はわずかと考えられます。

統合失調症の治療で生じた高プロラクチン血症第一選択薬を避けたり、合っていた抗精神病薬を変更したりするよりは、少量のブロモクリプチンを併用した方がはるかにプラスでしょう。もしも増悪を心配するのであれば、抗精神病薬をわずかに増量しておけば、中枢神経系に対する「作動」の作用は相殺されることでしょう。

統合失調症の治療中の高プロラクチン血症、恐れるに足らずですね。調べてみて納得しました。パーロデル、積極的に使いたいと思います(^-^)

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2009年2月14日 (土)

高PRL血症にパーロデル(1/2)

ブロモクリプチンパーロデル)という薬があります。ドパミン受容体作動薬でして、使われる対象は2つ。①高プロラクチン血症等のホルモン異常 ②パーキンソン症候群。今回は主に①高プロラクチン血症についての話です。

Photo_2 視床下部からドパミンが、下垂体門脈系と呼ばれる血管の中に放出されます。これが下垂体プロラクチン抑えています。ドパミンの働きが増せばプロラクチンは減りますし、ドパミンの働きが減るとプロラクチンは増えます。

統合失調症はドパミン受容体遮断薬である抗精神病薬で治療します。下垂体でドパミンが遮断されればプロラクチンの分泌が増えます。高プロラクチン血症が生じることがあります。

高プロラクチン血症になると、無月経乳汁分泌性機能障害が生じることがあります。妊娠や授乳でも上昇するぐらいですから、重大な問題なわけではありません。妊娠の問題や性生活への影響や、下着の汚れが生じる可能性がある、ということ。

こんなときに登場するのがブロモクリプチンパーロデル)です。抗精神病薬が「遮断」でしたが、ブロモクリプチンは「作動」する薬。下垂体に作用してプロラクチンの分泌を抑えます。

ただ、統合失調症の治療中に生じた高プロラクチン血症に対して、ブロモクリプチンの使用とに異議を唱える医師がいます。「ドパミン受容体遮断薬で統合失調症を治療しているのに、ドパミン受容体作動薬を加えるのは矛盾だ」という意見。よく「ブレーキを踏みながらアクセルを踏むようなもの」と例えられます。ドパミン作動薬を加えることで統合失調法が悪くなるかもしれない、と。私もそう思ってました。

しかし、そこで疑問がひとつ生じました。
ブロモクリプチンを併用している統合失調症を診たこと沢山あります。しかし、だからといって増悪した方を見たことがありません。もちろん、だからといって存在しないわけではないかもしれません。それにしても……。

そこで、自分なりにアレコレと考えてみました。結論としては「ブロモクリプチン」を併用することは、理論上はプラスではないかと今は思ってます。長文になりつつあるので、理由については次の記事にしたいと思います。

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2009年2月11日 (水)

抗精神病薬の分子量

新規型の抗精神病薬の分子量を添付文書を基に調べてみました。小数点以下は切り捨ててます。

ペロスピロン(ルーラン) 499
アリピプラゾロール
(エビリファイ) 448
リスペリドン
(リスパダール) 410
クエチアピン
(セロクエル) 383
ブロナンセリン
(ロナセン) 367
オランザピン
(ジプレキサ) 312

覚える必要はないもの。でも、次からの記事に関係する予定です。覚えるぐらいの勢いで把握すると、ビビッとくるかも。私は覚えてみました。

ペロスピロンギリギリ500以下。BBBを通るギリギリの値かも。

師匠(=448)エビ(リファイ)ちゃん」 エビちゃんの代わりにモハメド・アリ(ピプラゾール)でもいいかもしれません。

Ris_yotto_2ヨット(=410)に乗ったリス(パダール)」なんてイメージしやすいですね。

セロ食え(=セロクエル)ずに産婆さん(383)」 マジシャンのセロが産婆さんって似合わないな~(笑

ロナセン(ブロナンセリン)367。下線部の「ロナ」つながりで。

オラ(ンザピン)財布(=312)

何か覚え方がありましたらご提案下さい(^-^/

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2009年2月 8日 (日)

抗うつ薬の分子量

抗うつ薬であるSSRIs/SNRIの分子量を添付文書を基に調べてみました。小数点以下は切り捨ててます。

フルボキサミン(ルボックス、デプロメール) 434
パロキセチン(パキシル) 374
セルトラリン(ジェイゾロフト) 342
ミルナシプラン(トレドミン) 282

覚える必要はないでしょう。でも覚えると楽しいかも。私は覚えてみました。

セル(トラリン=小部屋、)密室(342)

「ミルナシプランはセロトニンとノルアドレナリンの2発(282)

他のも覚え方が何かありましたらご提案下さい(^-^/

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2009年2月 5日 (木)

家庭の心理学@足利

つい先日の2月1日、足利市で講演してきました。昨年も開催したスプリングセミナーに、再びお呼び頂きました。826席の会場、満席ではなかったので700名ぐらいでしょうか。沢山の方にお集り頂きました。

話の内容は「家庭で使える心理学」について。話すときの視線位置関係、あいずち褒めることの効用などについて。約60分。

今回の講演のためにまとめ直す作業ができ、私自身のために良い機会でした。……って書いてから、昨年の日記を見返してみると、一年前の自分も全く同じことを言ってます。「機会」というのは成長のために良いものですね。

昨年は「うつ病」についてでしたし、今年は「心理」。他にも「統合失調症」や「アルコール依存症」についてなど、精神科医として語るべきことは沢山あるように思います。「薬物依存」もまとめておくべきかも。あ、「認知症」は私が語らない方がいい気がします(^-^;

自分の知識、話せるように少しずつまとめておきたいですね(^-^)

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2009年2月 1日 (日)

質問はひとつずつ

「お話を聞き、非常に参考になりました。そこで3つ質問がございます。1つ目に……。2つ目に……。そして3つ目に……」

講演での質疑応答の際に、一度に複数の質問をする人がいます。イロイロと興味を持って質問することは良いことですが、「一度に」はマナーとして良いものではありません。

質問に答えることは演者にとって、予定外の話を即興ですることになりただでさえ負担なものです。そんなときに3つの質問を把握させるのは、かなりの負担でしょう。何を聞かれたか3つ覚えるだけで余裕をなくします。そして、その質疑応答を聞いてる側にとっても話の焦点が分からなくなります。ですから、一度に複数は好ましくありません。

恐らく、人が多い中、質問のためにマイクを手にすることに緊張しているのでしょう。ですから、無意識にマイクを持つ時間を短くしたくなる結果なのでしょう。そうでなければ、演者や周りの人の気持ちが想像できていないだけか。

ひとつ質問して答えをもらってから、次の質問をすべきでしょう。3つ聞きたいことがあれば、それを3回繰り返せばいいのです。

こんなことを書く以上、まずは自分から気をつけなきゃ(^-^)

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