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2009年2月17日 (火)

抗PRL血症にパーロデル(2/2)

統合失調症をドパミン受容体遮断薬で治療している際に、高プロラクチン血症に対してドパミン受容体作動薬を投与するか否か。抗精神病薬に、ブロモクリプチンパーロデル)を併用してよいのか。ここ数日、そんなことをアレコレと考えていました。

パーロデルの添付文書を見ていて、用量を見てみました。
パーキンソン症候群:15.0~22.5mgが維持量
高プロラクチン血症などのホルモン異常:7.5mgまで

パーキンソン症候群に対しては、高プロラクチン血症の3倍くらい使うようです。これは何故でしょう。それだけパーキンソン症候群が治しづらい疾患だから?それとも何か他の理由でしょうか。

そして統合失調症の治療中、ブロモクリプチンを併用すると増悪するかもしれないという考え。私もそう考えてました。でも増悪した人を診たことが、少なくとも私自身はありません。

それは「脳血管関門」がキーワードではないかと人に聞いたことがあります。どういうことでしょう。

血液中にあるもの全てがに達するわけではありません。血液の中にあるもののうち、脳血管関門を通過したものだけが脳に到達するんです。血液脳関門と言われることもあり、英語では「Blood-Brain Barrier」略して「BBB」。

Bbb このBBBをどんなものが通過するか。基本となる「分子量閾値説」によると、分子量500以下のもの。実際にはさらに脂溶性かどうかやトランスポーターなどが関与しています。

そこで、最近使っている抗精神病薬や抗うつ薬の分子量を見ると……

【SSRIs/SNRI】
フルボキサミン 434
パロキセチン 374
セルトラリン 342
ミルナシプラン 282
【抗パーキンソン薬】
ビペリデン 347
トリヘキシフェニジル337
プロメタジン 320
【新規型抗精神病薬】
ペロスピロン 499
アリピプラゾロール 448
リスペリドン 410
クエチアピン 383
ブロナンセリン 367
オランザピン 312
当然、全て300前後~400代。なるほど、まで届くわけです。

そして、ブロモクリプチンの分子量は750……ってデカッ!分子が大きいんです。脂溶性にしても、かなりBBBを通りづらい大きさ。ちょっと飲んだくらいじゃ中枢神経まで届かないハズ。これだからパーキンソン症候群を治療の際には多くの量が必要なのかも。これでブロモクリプチンの併用で増悪する統合失調症をあまり見たことがないのも分かる気がします。

そして、プロラクチンについてはどうか。視床下部からはドパミン血管の中に放出されて、これが下垂体で抑制的に作用します。このときBBBを通らず下垂体に到達できるんです。血液中ブロモクリプチンがあれば下垂体には簡単に届くんです。だから、少量でも高プロラクチン血症の治療ができるのでしょう。

文献的に見てみると、1983年にLundbergらがPETによる研究で、ブロモクリプチンが大脳半球よりも下垂体に多く取り込まれていたと報告しています。なるほど。

まとめると、服用したブロモクリプチンは、簡単に下垂体に届いて、中枢神経には届きづらいということ。ですから高プロラクチン血症を少量のブロモクリプチンの併用で治療しても、精神への作用はわずかと考えられます。

統合失調症の治療で生じた高プロラクチン血症第一選択薬を避けたり、合っていた抗精神病薬を変更したりするよりは、少量のブロモクリプチンを併用した方がはるかにプラスでしょう。もしも増悪を心配するのであれば、抗精神病薬をわずかに増量しておけば、中枢神経系に対する「作動」の作用は相殺されることでしょう。

統合失調症の治療中の高プロラクチン血症、恐れるに足らずですね。調べてみて納得しました。パーロデル、積極的に使いたいと思います(^-^)


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コメント

☆大変興味深いパーロデルのエントリーを 有難うございます。前回診察時に主治医に高プロラクチン血症について尋ねてみたばかりでした。「女の子ではないから余り心配いらないのでは…」と言われましたが、胸部外見も変わりつつありますし、下垂体の事など心配は差し迫っています…。今週またこちらのコピーを持参させて頂こうと思います。リスパダール内用液は流涎、アカシジアの副作用を軽減しているように見えます。昨日は幻聴への効果も上がって病気以前のようにすっきりした感じでした。今日は朝、体の強ばりがありましたがまた明日以降に期待しています。

投稿: ローズマリー | 2009年2月17日 (火) 21:13

>ローズマリーさん
 薬剤選択にあたって、この記事を参考にして頂けたとしたら幸いです。
 リスパダールによる高プロラクチン血症については、経過とともに自然と改善するとする報告もあるにはあります。しかし、さっさとパーロデルで下げてしまった方が簡単な話でしょう。
 この記事については「医者なら誰もが知ってる」という話ではありません。
 主治医の先生には「調べてみたらこんな話もありましたよ」「これについては私達の責任で、試させて下さい」ぐらいの提案がいいと思いますよ(^-^;

投稿: satoru | 2009年2月18日 (水) 13:17

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