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2009年3月30日 (月)

貯めた薬

ある日、外来に通院している患者さんから、泣きながらの電話がかかってきました。彼女は以前から、大量服薬による自殺を目的に薬を貯めこんでいるとのこと。

これからきて頂くために処方したお薬でした。それをぬために使おうとしていると言うのです。ひとつの薬が「」と「」の両面を意味することになるとは。

そんな薬をまとめて口に入れ思いとどまって口から出したこともあるとか。死にたい気持ちと生きたい気持ちの両方が存在しているのでしょう。その2つが戦っているのでしょう。

そして、そのことを電話してきたのも、死にたい気持ちがある中で、生きたい気持ちがあったからこそ。しかし、生と死の間で迷う葛藤を抱き続けることは辛いことでしょう。

ひとつ提案をしてみました。葛藤を断ちきって楽になるべく、貯めこんだ薬を主治医に渡して処分しませんか、と。「指示」はしません。あくまで「提案」。

彼女はに入ったを沢山持ってきました。しばらく迷った様子を見せた末に、その袋を手渡してくれました。しかし、さらに迷った様子を見せ、結局は持ち帰ってしまいました。

一度は持ってきてくれたその袋。また持ってきてくれることでしょう。そして、死の呪縛から解き放たれるために渡してくれることを願うばかり。

さて、どうなるやら。

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2009年3月24日 (火)

ブーメランを避ける

投げたブーメランが返ってきたのをよける、みたいなタイトルになってしまいました。でも、ちょっと違います。

開放病棟の患者さんで、しばしば病棟の外に外出する人がいます。このとき外出できる時間は決まっています。

しかし、そんな患者さんの中に一人、しょっちゅう遅れて帰ってくる方がいました。それまで何度も注意を受けてましたが、改めることがないとのこと。担当ではありませんでしたが、看護師から「遅れて帰ってくるその人に、先生から一言お願いします」な~んてことになっちゃいました。

こんなとき、患者さんを叱りつける医者も多いのではないでしょうか。

心理学に「ブーメラン効果」と呼ばれるものがあります。説得を試みれば試みるほど、相手に逆の効果をもたらすもの。

自由を何らかの方法で制限されたときに反応性に起こる力です。

高圧的な説得、相手に不快感を与えるアプローチブーメラン効果が強まります。「言うことを聞け!」なんて言われたら、言うことを聞きたくなくなる気持ちが生じます。

このブーメラン効果が生じにくいように意識しながら、患者さんに対応してみました。

そもそも相手は随分と年上。医者と患者ではあっても、叱り飛ばして当り前という考えはよくないでしょう。「年下からこんなことを言われるのも嫌かもしれませんが……」とクッションとしての前置きを入れてみました。そして、彼にも気持ちがあるハズですから責めないように気をつけました。

「時間を守るように指示」をする上で、「病棟管理上、時間を守ってもらえると助かる」とした上でお願いしました。また、どう考えても私自身のメンツが絡んでいるのは避けられないこと。しかし、これはブーメラン効果の素であり、要注意。あえて否定せず「私の顔を立ててもらえると助かる」とお願いをしてみました。

すると、その日から病棟に戻る時間を守ってくれるようになったんです♪ その気持ちが嬉しいですね(^-^)

と思って、何日か経ってから感謝を伝えてみました。正しい行動は強化すべきでしょうから。

すると彼はニッコリと、過去の遅刻をわびた上で「時間を守ってみると、看護師も嫌な顔をしないし気持ちいいことが分かりました」と、時間を守る彼なりのメリットを発見したようでした。

時間についての病棟規則を「守る/破る」について、プレッシャーをかけずに、強要せずお願いしてみたことが奏功したのでしょう。「Win-Win」な関係になれたのはホント嬉しいことですね(^-^)

まさに「Win-Win」な関係になれたのは嬉しいことですね(^-^)

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2009年3月17日 (火)

EMDR講習会

今月上旬、日本EMDR学会(http://emdr.jp/)が主催するEMDR講習会に行ってきました。今回の場所は神戸。東京の私としてはちょっと遠い。ときに東京で行われることもあるようです。3日間、朝から夕方までEMDRでした。

EMDRというのは、PTSD治療法のひとつです。キョロキョロさせながら、トラウマの場面を想起させるというもの。五円玉をぶら下げてユ~ラユ~ラと揺らすイメージを持つ人も多いことでしょう。EMDRでの眼球運動はすごく早いです。治療者が手を左右に動かし、クライアントがそれを一生懸命に目で追います。

眼球運動は数十秒程度のものを何度も何度も繰り返します。導入から始まり、メインの眼球運動を伴った治療、評価終了という流れ全体では数十分を要します。学会としては90分を推奨。って時間かかるな。

これになぜ効果があるのかはハッキリとは分かっていないようです。でも、結果としてPTSDに対して良い治療成績が挙がっているとのこと。エビデンスは豊富です。

EMDRの治療効果について、様々ながあります。

・PTSDで障害されているワーキングメモリが、眼球運動により改善すると言われています。

REM睡眠時の眼球運動が、右脳から左脳へと情報が送られることに関係し、日中の情報を寝ている間に処理していると言われています。EMDRでは、眼球運動によりその効果を得ているのではないかと考えられます。

・PTSDに至った外傷場面を想起したとき、その「危険な過去」のイメージに没入してしまいがち。しかし、眼球運動をしながらであれば「安全な今」の世界を意識しながら「危険な過去」をイメージすることができ、思考の円滑に進むと考えられます。

・眼球運動自体にリラクゼーション効果があるのではないか

・眼球運動による刺激が「定位反応」を引き起こすと言われています。すなわち、刺激により「ん?何だ?」というように覚醒度が一時的に上昇し、安全を確認して覚醒度が下がるという反応が繰り返されとされています。

……と色々な説があります。全てが本当なのかもしれません。

かつては眼球運動を伴った暴露療法ではないか、すなわち外傷体験を思い出しながらそれに慣れるのを待つだけではないか、と考えられていた様です。しかし、暴露療法とは異なりイメージが次々と移り変わり、思考が進み、ストレスが処理されると考えられており、暴露療法とは違うと考えられています。

見た目は奇妙ですが、なかなか興味深い手法です。学んだからには治療で使ってみようかな。今、私が治療で扱うとしたらシンプルなPTSDでしょう。PTSDと呼ぶほどじゃなくても、心にひっかかったことを残している人の治療に使えます。長期にわたって暴力にさらされ続けたり複数の外傷体験があったり人格的な問題を併せ持っていたりするのは、他に任せた方が良さそうです。

さ~て、今までずっとどうにもならずにいた人が、これで何とかなるといいな(^-^)

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2009年3月10日 (火)

精神遅滞 ICD-10とDSM-IV

精神科で用いられる2つの診断基準、DSM-IVICD-10。この2つで、精神遅滞IQによる重症度分類が行われています。それをちょっとまとめてメモメモ。

DSM-IV 重症度 ICD-10
50-55から
およそ70
軽度 50から69
35-40から50-55 中等度 35-49
20-25から35-40 重度 20-34
20-25以下 最重度 20未満

となっています。これだけ見ると、ちょっと複雑。というわけで記憶しやすいようにまとめると……

DSM-IV 重症度 ICD-10
(コード)
50以上70以下 軽度 50以上70未満
F70
35以上55以下 中等度 35以上50未満
F71
20以上40以下 重度 20以上35未満
F72
25以下 最重度 20未満
F73

DSM-IVとICD-10は、どちらも似たような基準でそろえてあいます。ちょっとした違いは、DSM-IVずつ上に幅を持たせていること。

DSM-IV基準の覚え方は「精神遅滞の重症度分類」で扱っています。DSM-IVを覚えれば、ICD-10も覚えられそうですね(^-^)

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2009年3月 3日 (火)

外在化

最近、症状の「外在化」を意識するようにしています。

精神科の病気は、しばしばいつの間にかに考えを変化させてしまいます。そして、その病的な考えに支配され、支配されてることに気が付けないことがあります。

こう言うと、統合失調症がまず思い浮かびますが、うつ病だって依存症だって、摂食障害だって同じことが生じます。

病気を否定とまでいかなくても、病気の考えと自分の考えの境目が分からなくなっていることもしばしばです。

健康な自分本来の考えが意識・無意識問わずどこかにあって、それとは別に湧き起る病気による考えが生じ、それらが戦っているんです。そんなときに病的な気持ちを「自分の気持ち」ととらえるべきではないように思います。

例えるのであれば。確かに、癌細胞は自分の細胞から生じたものです。診断が下るまでは、そこも自分の体の一部のように考えています。しかし、だと分かれば、もはや自分のものとは考え難いのではないでしょうか。本人からしたら自分の体というより、でしょう。

外在化、すなわち病気による考え自分本来の「外」ととらえることを促すようにと考えています。これによって病気によって生じる考えに対処しやすくなったり、病気や治療に対する理解が変わったりするものです。

以前から、何気なくしていたハズ。でも意識すると何かが違ってきそうです。そんな気持ちになったから、ちょっとメモメモ〆(・_・)

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