貯めた薬
ある日、外来に通院している患者さんから、泣きながらの電話がかかってきました。彼女は以前から、大量服薬による自殺を目的に薬を貯めこんでいるとのこと。
これから生きて頂くために処方したお薬でした。それを死ぬために使おうとしていると言うのです。ひとつの薬が「生」と「死」の両面を意味することになるとは。
そんな薬をまとめて口に入れ、思いとどまって口から出したこともあるとか。死にたい気持ちと生きたい気持ちの両方が存在しているのでしょう。その2つが戦っているのでしょう。
そして、そのことを電話してきたのも、死にたい気持ちがある中で、生きたい気持ちがあったからこそ。しかし、生と死の間で迷う葛藤を抱き続けることは辛いことでしょう。
ひとつ提案をしてみました。葛藤を断ちきって楽になるべく、貯めこんだ薬を主治医に渡して処分しませんか、と。「指示」はしません。あくまで「提案」。
彼女は袋に入った薬を沢山持ってきました。しばらく迷った様子を見せた末に、その袋を手渡してくれました。しかし、さらに迷った様子を見せ、結局は持ち帰ってしまいました。
一度は持ってきてくれたその袋。また持ってきてくれることでしょう。そして、死の呪縛から解き放たれるために渡してくれることを願うばかり。
さて、どうなるやら。
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