カテゴリー「薬物全般」の12件の記事

2009年7月10日 (金)

初回通過効果

精神科では薬をよく用います。その薬が目的の臓器(精神科医では)まで届く経路を考えてみると……

一般的にから飲んだ薬は、を通ってから吸収されて、肝臓を通って、血流に乗って運ばれて、脳血流関門(BBB)抜けて、やっと目的の臓器に到達します。

今回注目したいのは肝臓。腸から吸収されたものは必ず肝臓を通り、この際に代謝を受けるものです。飲んだ薬は、そのまま肝臓を通過できるものもあれば、違う物質に変化してしまうものもあります。これは初回通過効果と呼ばれます。

これが薬物治療でもたらす問題は2つ。1)飲む薬の量が増えてしまうこと、そして、2)個人の差が大きくなること。

1)薬の量が増加
 本当は、目的の臓器での必要量だけ飲んで済ませたいものです。しかし、肝臓で違う物質に変化して無駄になる量を加えた量を服用する必要が生じます。体に入る薬の量自体が増えると、肝臓で代謝されるにしても、副作用はより多く出てしまいます。

2)個人の差が増大
 肝臓で代謝する力に個人の差があります。肝臓で代謝する力が強い人は薬の必要量が大きくなります。肝臓で代謝する力が弱い人は予想以上に薬の効果が出てしまいます。例を挙げれば、同じお酒の量を飲んでも、酔う人と酔わない人がいるのがソレ。一言で「力」と言っても、実際には様々な種類の酵素などが関わるので非常に複雑です。

以前は、飲み薬を処方していて、なかなかそんなことまで考えなかったものです。医師でそこまで考えてる人はどのくらいの割合なんでしょうね(・_・)

なんでこれを言い出したかと言えば、この点でリスパダールコンスタはメリットが大きいのではないかと考えています。

| コメント (0) | トラックバック (0)

2008年2月24日 (日)

自分の万能感を疑え

 以前、統合失調症薬物治療多剤併用が行われました。今でも一部で行われています。「こっちの薬で幻覚・妄想を抑え、あっちの薬で衝動性を抑えつつ、そっちの薬で賦活する」ってな具合です。私の身の周りでは「サジ加減」なんて表現が用いられます。この手の調整は医師が敏感に患者の変化を感じ取ろうと試み各薬剤の特性について信念を抱き、処方箋に向かうのです。その一生懸命な姿勢は素晴らしいものです。

 しかし、私はそれを否定します。多剤併用を否定します。これは私だけでなく、今では一般的に否定されています。この様な処方は医師の万能感に基づくものであり、医師ひとりがそんなに万能なハズがありません。自分自身が医師ですが「医師=スーパーマン説」を否定します。

「薬の特性について、医師一人が感じ取れることは嘘かも知れない」
「医師が語る薬の特性は迷信かもしれない」

 そう常に自分自身に言い聞かせるように心がけてます。

 処方していて、目の前の患者さんにいろんな変化が起きます。しかし、それは1)そう見えただけかもしれませんし、2)たまたまかもしれません

 

Glasses_2  1)医師の眼は曇ってます
 「効け!」と思って処方した薬は効いてくれないと困ります。しかし、そんなことは実際に起こります。薬が効かないと、無意識下に葛藤が生じます。その葛藤を解決するため、効いたと信じることにしがちです(それも無意識下で)。そして、それを信じてしまいます。
 違うパターンも考えられます。「効け!」と思って、その患者さんが効かないタイプだったとき、その失望は大きいもの。「効かなかったぁぁっ!(>_<」という印象は非常に強く残り、その薬を「効かない薬剤」と分類してしまうかもしれません。

 その他にも、医師は様々な感情を持って処方箋に向かいます。そして、感情は無意識下で医者の診る目を曇らせます。医師も人間なのです。私も、です。

 

Dice 2)「たまたま」に踊らされます
 処方をしていると、目の前の患者さんに様々な変化が生じます。例えば……

 ルーランを処方して、患者さんが激太りしたことがあります。しばらく「ルーランは太る薬なんじゃないか」と思っていたことがありました。しかし、データとして、ルーランが特に太りやすい薬ということはありません。リスクで言えばMARTAの方がよっぽど上のハズ。その患者さんが「たまたま」ルーランで太りやすい人だったのでしょう。

 最近ではジェイゾロフトで患者さんが攻撃的になったことがありました。以前の私だったら「ジェイゾロフトは患者さんを『煽る』傾向があるのか」と思い込んだところでしょう。しかし、アクティベーション症候群どの抗うつ薬にだって起こること。ジェイゾロフトで自殺関連事象が少ないことを思えば、むしろアクチベーション症候群のリスクが少ないことすら考えられます。

 医師が持つ信念は、自分(あるいは知っている医者)目の前の患者さんに「たまたま」起きた変化がデータの元なのです。

 

 知らないうちに眼が曇り偶然に踊らされる医者は万能ではありません。薬の特性について、医師一人が感じ取れることは嘘かもしれないんです。医師が語る薬の特性は迷信なのかもしれません。自分自身の感覚も信じすぎないように気をつけてます。

 自分としては患者さんを良くしたつもりでも、患者さんやご家族意見・感想を求めるようにしています。「僕から見て良くなった様に思っちゃうけど、実際にはどうなんだろ」といった具合に。

 そして、患者さんに変化があっても、それがデータとしてどうなのかを製薬会社の人(MRさん)に聞くこともあります。目の前の数人や数十人の患者さんよりも、もっと数百人や数千人(場合によっては数万人)を元にしたデータで語られた論文を参考にするようにしています。

 

 このプシコ・メモメモはそんな姿勢で綴られています。薬による患者さんの変化について書くこともありますが、それは論文や本での根拠があるときに限るようにと思っています。なるべく一個人の意見で書くのではなく、一般的にも良しとされていることを元に書くように気をつけています。

 さて、これをお読みになった皆さんはどのように感じたでしょうか。医師の中には不快に思った方がいらっしゃったかも知れません。それがすごく不安です。ただ、私達=医師の万能感疑問だけでも感じて頂けたら幸いですm(_ _)m

| コメント (8) | トラックバック (0)

2008年2月17日 (日)

セロトニン受容体のサブタイプ

精神疾患ではしばしばセロトニンが登場します。そして、の効果を語る上でもセロトニンがしばしば出てきます。セロトニンを受ける「セロトニン受容体」には様々なサブタイプが存在し、各々の作用は異なっています。

5-HT1A:
 不安・抑うつに関係しています。1A2抑制する作用があります。薬で言えば、タンドスピロン(セディール)は1A作動薬として抗不安作用があります。
 セロトニン症候群はこの1Aが関係していると考えられています。

5-HT1B/1D:
 片頭痛に関係します。偏頭痛治療薬のエレトリプタン(レルパックス)やスマトリプタン(イミグラン)は1B/1Dの刺激薬です。

5-HT2:
 不安・抑うつに関係しています。うつ病では、セロトニン量が少なく2感受性が亢進していると考えられています。
 新規抗精神病薬のSDA(リスペリドン、ペロスピロン)では、ドパミン2Aともにセロトニンの2が同時に遮断されます。これによりドパミンを遮断することに伴うEPSを少なくでき、陰性症状を改善さえるものと考えられています。ここで2Aとは書いたものの、多少は他の受容体も遮断すると思われ、さらに言えば、SSRIの様にセロトニントランスポーターの阻害作用も多少は存在するものと思われます。

5-HT3・4:
 嘔吐中枢や消化管の運動に関与しています。4海馬などに存在し、認知機能に関与しています。

5-HT6:
 認知機能に関与していると考えられています。

5-HT7:
 サーカディアンリズムなどに関与しているものと考えられます。

SSRI/SNRIは、サブタイプには直接関係ありません。セロトニンがトランスポーターで取り込まれてしまうのを防ぎ、シナプス間隙のセロトニン量を増やします。そして、抑うつや不安を改善させる効果が期待できます。

上記は中枢神経系を主に書いていますが、消化管や心筋、血小板などにも作用があり、その作用は様々です。しかし、専門外で責任もてないので割愛!

曖昧でよく把握しきれない点もありますし、おそらく詳しく分かっていない点もあるでしょうし、まだまだ分からないことだらけです。
それでも、以前に比べると分かるようになってきたかな(^-^)

| コメント (3) | トラックバック (0)

2008年2月13日 (水)

セロトニンとシナプス

以前の記事でセロトニンが話題になったので

精神薬理学エセンシャルズ第2版

をパラパラ開いてセロトニンのお勉強。まずは基本的なところから(・_・)

精神科領域ではしばしばセロトニン(Serotonin、5-ヒドロキシトリプタン、5-HTと略)が登場します。

このセロトニンは、うつ病・パニック・強迫神経症といった疾患に関係していると言われており、その治療薬SSRI/SNRIの最初の「S」はセロトニン。そして統合失調症の治療でも、SDA(リスペリドン、ペロスピロン)の「S」もセロトニン。

セロトニンは、神経細胞のセロトニン受容体にくっついて作用をします。そして、この受容体にもイロイロあります。

セロトニン受容体は7つのファミリーに分けられており、今のところ14のサブタイプが明らかになってます。

5-HT1 :1A/1B/1D/1E/1F
5-HT2 :2A/2B/2C
5-HT3
5-HT4
5-HT5 :5A/5B
5-HT6
5-HT7

Synapse_2 この受容体は神経系の様々な場所にあり、その作用もイロイロです。

神経細胞から神経細胞へと情報が伝えられるとき、その細胞の間には隙間があり、セロトニンを始めとした神経伝達物質が介在しています。ここは「シナプス」と呼ばれており、受容体は「シナプス」「シナプス」の2つに分けられます。

シナプスプレ・シナプス)というのは神経伝達物質を出す側についているもの。セロトニンであれば、1A1B、1D等はシナプス前に存在します。シナプス前(樹状突起)の1Aに作用すれば、セロトニン神経を通るインパルスの流れを遅くします。シナプス前(シナプス)の1B1Dに作用すれば、セロトニンの遊離が阻害されます。

シナプスポスト・シナプス)こそ、次の神経細胞で情報を待ち構え、次の神経細胞へと情報を伝えている存在。シナプス後には、それこそ様々な受容体が待ち構えており、シナプス前にあった1A、1B、1Dがシナプス後にも存在します。

そして、受容体に作用したセロトニンはシナプス前にある「セロトニン・トランスポーター」により細胞内に戻り、モノアミン酸化酵素(MAO)により分解されます。

まずは、そこまで(^-^)

| コメント (5) | トラックバック (0)

2007年10月29日 (月)

ジェネリック in USA

ジェネリックについて先進国と言われているアメリカでの話。

抗うつ薬・Wellbutrin XLのジェネリック使用者が頭痛、不安、消化器症状、振戦、不眠といった症状を報告していることを受けて、アメリカFDAがこのジェネリック薬の調査に乗り出しました。http://www.biotoday.com/view.cfm?n=22930&r=7873

ジェネリックについて審査が厳しく、ジェネリックの品質が保証されているハズのアメリカ。それなのに、こんなことが。審査がユルユルの日本のジェネリックはどーなのやら(>_<;

ジェネリックについて調べると、以下のような記事が見つかりました。ムムム……
http://intmed.exblog.jp/1590715/
http://venacava.seesaa.net/article/23705222.html
http://mhage.exblog.jp/3377286

| コメント (0) | トラックバック (0)

2007年6月22日 (金)

×水虫薬のジェネリック

病棟では水虫を持っている人がいます。その中には爪まで侵される爪白癬の人もチラホラ。そこでイトラコナゾールの内服で治療をすることがあります。

私の勤めている病院で採用しているイトラコナゾールは2つ。先発品(非ジェネリック品)のイトリゾールジェネリック=後発品トラコナ

だんだんと温かくなり、を迎えようというところ。これから水虫が活発になるところですね。改めて、イトラコナゾールによる治療を見直してみようと思っていたところでした。そんな中、看護師さんがこれまでにイトラコナゾールでの治療結果について、簡単な報告書をくれました。

看護師の目的は「○○さんの足は十分に治療できてないので、診察して下さい」と言いたいがためのこと。ですから、評価は看護師の主観的なもので、学術的な指標などはなく、例数も15と多くありません。研究結果として発表できるほどの信頼性はないものです。ただ、私の考えとは無関係に行われたもので、バイアスは極めて少ないと言えるでしょう。

で、結果を見てみると……

Itraconazole_4   

7Tといのは「7錠」ではなく「1クールが7日間」という意味。この表記はおかしいですね。ハイ、指導しておきます^-^;

先発品を使った人しか治ってません! ジェネリック=トラコナで白癬が治ってないんです!o(>_<)o

イトラコナゾールで治療をしたのが15人。

改善が11人で、全員がイトリゾール(先発品)

不変あるいは悪化が4人。トラコナ=ジェネリックが3人+イトリゾール=先発品が1人。

ジェネリックの話になるといつも「先発品と同じ成分が入っているから、同じ」「生物学的同等性試験をしているから大丈夫」などと言われています。でも……

実際に明らかに違うじゃん!(怒

ジェネリック処方した事に後悔してしまいます。こーいうことがあると、ジェネリックの処方について、否定的にならざるを得ません(-_-;

関連する記事として 後発医薬品に対する不信 という記事も書いてますのでご参考まで。

 

| コメント (0) | トラックバック (1)

2007年6月11日 (月)

精神科薬の形

Photo_5精神科の薬はいろいろありますが、お互いに似ていることが多いものです。図に書いたのは、なんとなくのイメージ。超いいかげんラフスケッチ。

抗精神病薬と言えば、たいていは六角形が3つ繋がった形。

抗うつ薬のメインである三環系と言えば、六角形+七角形+六角形

睡眠薬や抗不安薬の主であるベンゾジアゼピン系の薬は六角形+七角形そして離れて六角形

あとは、くっついてる物が違ったり、例外があったり。でも、だいたいはそんなものです。そこを押さえて、薬剤の構造式を眺めてみたいところ。すると各々の個性が見えてくるかも知れませんね♪(^-^)

| コメント (0) | トラックバック (0)

2007年5月 6日 (日)

後発医薬品に対する不信

後発医薬品ってのは「ジェネリック」ですね。
業界用語で言うところの「ゾロ」。
特許が切れた薬剤を、他の会社が安く売ろう、というもの。

「既に売られていた薬と同じですよ♪」とうたっています。
同じだと言う根拠になる試験はどうやら次の2つ(かな?
生物学的同等試験」と「溶出試験」ですかね。

なんだか複雑なもので頭がこんがらがってます(>_<;
こんど、お薬メーカーさんに聞いてみようかな。


で、なんでこんなことを言い出したのかというと
後発医薬品の生物学的同等性試験ガイドラインについて
を読んでみました。
http://www.nihs.go.jp/drug/be-guide/beguide1.html


読んでみると、こんなことが書いてあります。



■さとる的ポイント1 Generic
後発医薬品の試験製剤は,
実生産ロットの製剤であることが望ましい


ん?「望ましい」という程度なの!?
ロットが違っててもいいんですか!?(驚
じゃあ、試験製剤と実生産の製剤が多少違う可能性はアリ?
試験用の薬はテストをクリアするためで、
実生産用の薬は儲けるため……(>_<;



■さとる的ポイント2
「生物学的同等の許容域は、AUC及びCmaxが
対数正規分布する場合には、試験製剤と標準製剤の
パラメータの母平均の比で表すとき0.8~1.25である」


先発品の80%の血中濃度が得られたら同等って判断ですか。
8割って……低っ!(>_<;

なんでも悪く裏があるように考えるのは好きではありません。
しかしこればかりは……大きな問題です。

ジェネリックの宣伝で「同じ♪」と言っているのを
信じてましたが急にすっごく不安になってきました。
うん、お勉強をしてみなきゃ、です(・_・;

| コメント (0) | トラックバック (0)

2007年5月 1日 (火)

患者サイドからすると……

ヤンセンファーマ社のリスパダール講演会@品川で、統合失調症の患者さんそのお父様のスピーチがありました。

やっと本当の自分に出会えた―統合失調症と生きる当事者・家族からのメッセージ Book やっと本当の自分に出会えた―統合失調症と生きる当事者・家族からのメッセージ

著者:上森 得男
販売元:アルタ出版
Amazon.co.jpで詳細を確認する

の著者です。

その話の中で力を入れていた言葉は
少しでもより効果のある良い薬を使って下さい
との言葉。

非定型の薬を使う方が良いのは当たり前の事。同じ非定型の中でもベストの薬剤を……個人的な経験によらず、一般的にベストとされる薬剤を選ぶべきなのでしょう。そりゃあそうです。自分を治すお薬を、医師の個人的な好みだけで選択されてはたまりません。
そして、その中でもベストの剤形を用いていくべきなのでしょう。
また、安さばかりが強調され、効果や信頼性に疑問が残るジェネリックの使用は慎重にすべきものでしょう。

そんな事を改めて考えさせられました(・_・)

| コメント (2) | トラックバック (0)

2007年4月22日 (日)

薬物療法のためのカルテ記載

医師の皆さん、薬物治療をする上でカルテどんな記載をしていますか?

Chartヤンセンファーマ社によるリスパダール講演会@品川で、重本病院の病棟看護主任の岡掛先生から、看護師は医師の処方、その変更について理解しようとする態度が必要、との話がありました。

それは看護師の立場からの話でしたが、我々=医師の立場からすると、看護師を始めとしたコメディカルに処方変更の目的等を伝えようとする姿勢が必要なのでしょう。

ここ最近、怠りがちでしたが、カルテを手に取りうる人々に、処方やその変更の内容のみならず「目的」が伝わるようにカルテ記載するように心がけたいと思いました。うん、気をつけよっとo(・_・)o

| コメント (0) | トラックバック (0)

より以前の記事一覧