カテゴリー「統合失調症-イロイロ」の25件の記事

2009年8月31日 (月)

アドヒアランスは予測困難

藤田保健衛生大学の藤田先生の講演のメモが出てきたので、ちょっと整理。

近年、統合失調症の再発リスク、その主な原因となるアドヒアランスの低下についてよく語られます。医師が思うより実際のアドヒアランスは低下しがちだといいます。その主なデータは海外のもの。

日本人については、その国民性や社会システムからして、海外と違うのではないかという疑問が生じます。さて、どうなのか。

藤田先生がアドヒアランスを調査した発表をしていました。もちろん日本でのもの。MEMSという、薬の瓶をいつ開閉したのかを記録する装置を用いての研究でした。

退院後を見ると、アドヒアランスが良い患者の割合は、退院後1ヶ月で80%を切る、6ヶ月で60%を切っていました。最初に80%に落ちる中、殆どが最初の一週間に落ちるという話でした。退院直後が特に注意すべきポイントということ。

MEMSで薬瓶の開け閉めが記録されていると、患者としては通常よりも服薬を頑張ったハズ。MEMSで観察されなければ、もっとアドヒアランス不良の割合が多いことでしょう。

その症例を個別に評価すると、その服薬の良し悪しを医師が把握できている割合は限られ、推測に失敗することが多いという内容でした。

また、服薬不良を見つけだすのに、問診よりもDAI-10が有用だと語られていました。自記式なので外来の合間に使うのに負担が少なく、診療における良い指標が得られそうですね。

普段、できるだけ「お薬、飲めてますか?」と聞く様にしてます。そして、皆さん薬を飲めてると思いこんでましたが、その評価は実際には難しい様ですね(・_・;)

| コメント (3) | トラックバック (0)

2009年8月28日 (金)

アドヒアランス低下因子

CNSフォーラムでのOlivares先生の講演で、統合失調症の治療におけるアドヒアランスについて話が出ました。アドヒアランスがより悪くなりやすい因子について調査したとのこと。

違法薬物を主とした物質の乱用がある人だとアドヒアランスが低下する傾向にあったといいます。覚醒剤や麻薬、有機溶剤などの使用に伴い統合失調症を発症する人は少なくなく、その際には注意が必要です。

また、薬剤の反応が良くないとアドヒアランスが悪くなる傾向があります。効いた感じがしないと飲む必要性がピンとこないのでしょうか。薬物によって十分に改善してないと服薬の重要性が理解できないのでしょうか。

そして、認知機能が「高い人」だとアドヒアランスが悪化する傾向にあるといいます。Olivares自身が「意外だった」と言ってましたが、確かにこれは意外です。認知機能が高いと「私の頭は普通だから、薬が無くても大丈夫」と思いがち、ということなのでしょう。注意が必要ですね。

| コメント (0) | トラックバック (0)

2009年2月24日 (火)

パーロデルで精神症状は出るか?

ブロモクリプチンパーロデル)について、旭川医大の千葉先生らが過去の国内文献における副作用の報告についてまとめたものを読んでみました。様々な起こりうる副作用について集計したもの。私は精神症状に注目してみました。すると「やっぱり」という内容。精神症状の報告は24例で、殆どがパーキンソン病

調べた文献のパーキンソン病についての報告が153例。精神症状の報告は22例。精神症状の報告がパーキンソン病ばかりに見られるのは……

・パーキンソン病ではこの薬を大量に使うため
疾患の特異性
併用薬の影響

……ではないかと筆者は考察していました。パーキンソン病とされる中には、幻覚を伴うレヴェィ小体型認知症が多く含まれるハズ。また、併用薬としてドパミンに作用する薬を使っていることが多いハズ。そんな中、パーキンソン病に対しては22.5mg/dayまでと大量の使用が認められています。この疾患を背景にブロモクリプチンを大量に使うと精神症状に影響があるのでしょう。

末端肥大症についての報告が149例。その中では精神症状の報告が約150例の報告の中で2例だけ。それも眠気と乗り物酔い様の不快感。どちらも統合失調症を増悪させる因子とは考えにくいもの。

そして、高・正常プロラクチン血症については計917例。この中に精神症状の報告はありませんでした

末端肥大症プロラクチン異常で使うブロモクリプチンの量は7.5mg/dayと少量。その量では殆ど精神症状は出ないようです。

疾患 一般的な
使用量
全例数 精神症状の
報告数
パーキンソン病 大量 153例中 22
末端肥大症 少量 149例中 2……といっても眠気と
乗り物酔い様の不快感
高PRL血症
正常PRL血症
少量

917例中

0

以上のことからすると、統合失調症の治療中に使うブロモクリプチンはごく少量であることを考えると、やはりブロモクリプチンによる精神症状の増悪はさほど気にしなくて良いと推測されます。

| コメント (0) | トラックバック (0)

2009年2月17日 (火)

抗PRL血症にパーロデル(2/2)

統合失調症をドパミン受容体遮断薬で治療している際に、高プロラクチン血症に対してドパミン受容体作動薬を投与するか否か。抗精神病薬に、ブロモクリプチンパーロデル)を併用してよいのか。ここ数日、そんなことをアレコレと考えていました。

パーロデルの添付文書を見ていて、用量を見てみました。
パーキンソン症候群:15.0~22.5mgが維持量
高プロラクチン血症などのホルモン異常:7.5mgまで

パーキンソン症候群に対しては、高プロラクチン血症の3倍くらい使うようです。これは何故でしょう。それだけパーキンソン症候群が治しづらい疾患だから?それとも何か他の理由でしょうか。

そして統合失調症の治療中、ブロモクリプチンを併用すると増悪するかもしれないという考え。私もそう考えてました。でも増悪した人を診たことが、少なくとも私自身はありません。

それは「脳血管関門」がキーワードではないかと人に聞いたことがあります。どういうことでしょう。

血液中にあるもの全てがに達するわけではありません。血液の中にあるもののうち、脳血管関門を通過したものだけが脳に到達するんです。血液脳関門と言われることもあり、英語では「Blood-Brain Barrier」略して「BBB」。

Bbb このBBBをどんなものが通過するか。基本となる「分子量閾値説」によると、分子量500以下のもの。実際にはさらに脂溶性かどうかやトランスポーターなどが関与しています。

そこで、最近使っている抗精神病薬や抗うつ薬の分子量を見ると……

【SSRIs/SNRI】
フルボキサミン 434
パロキセチン 374
セルトラリン 342
ミルナシプラン 282
【抗パーキンソン薬】
ビペリデン 347
トリヘキシフェニジル337
プロメタジン 320
【新規型抗精神病薬】
ペロスピロン 499
アリピプラゾロール 448
リスペリドン 410
クエチアピン 383
ブロナンセリン 367
オランザピン 312
当然、全て300前後~400代。なるほど、まで届くわけです。

そして、ブロモクリプチンの分子量は750……ってデカッ!分子が大きいんです。脂溶性にしても、かなりBBBを通りづらい大きさ。ちょっと飲んだくらいじゃ中枢神経まで届かないハズ。これだからパーキンソン症候群を治療の際には多くの量が必要なのかも。これでブロモクリプチンの併用で増悪する統合失調症をあまり見たことがないのも分かる気がします。

そして、プロラクチンについてはどうか。視床下部からはドパミン血管の中に放出されて、これが下垂体で抑制的に作用します。このときBBBを通らず下垂体に到達できるんです。血液中ブロモクリプチンがあれば下垂体には簡単に届くんです。だから、少量でも高プロラクチン血症の治療ができるのでしょう。

文献的に見てみると、1983年にLundbergらがPETによる研究で、ブロモクリプチンが大脳半球よりも下垂体に多く取り込まれていたと報告しています。なるほど。

まとめると、服用したブロモクリプチンは、簡単に下垂体に届いて、中枢神経には届きづらいということ。ですから高プロラクチン血症を少量のブロモクリプチンの併用で治療しても、精神への作用はわずかと考えられます。

統合失調症の治療で生じた高プロラクチン血症第一選択薬を避けたり、合っていた抗精神病薬を変更したりするよりは、少量のブロモクリプチンを併用した方がはるかにプラスでしょう。もしも増悪を心配するのであれば、抗精神病薬をわずかに増量しておけば、中枢神経系に対する「作動」の作用は相殺されることでしょう。

統合失調症の治療中の高プロラクチン血症、恐れるに足らずですね。調べてみて納得しました。パーロデル、積極的に使いたいと思います(^-^)

| コメント (2) | トラックバック (0)

2009年2月14日 (土)

高PRL血症にパーロデル(1/2)

ブロモクリプチンパーロデル)という薬があります。ドパミン受容体作動薬でして、使われる対象は2つ。①高プロラクチン血症等のホルモン異常 ②パーキンソン症候群。今回は主に①高プロラクチン血症についての話です。

Photo_2 視床下部からドパミンが、下垂体門脈系と呼ばれる血管の中に放出されます。これが下垂体プロラクチン抑えています。ドパミンの働きが増せばプロラクチンは減りますし、ドパミンの働きが減るとプロラクチンは増えます。

統合失調症はドパミン受容体遮断薬である抗精神病薬で治療します。下垂体でドパミンが遮断されればプロラクチンの分泌が増えます。高プロラクチン血症が生じることがあります。

高プロラクチン血症になると、無月経乳汁分泌性機能障害が生じることがあります。妊娠や授乳でも上昇するぐらいですから、重大な問題なわけではありません。妊娠の問題や性生活への影響や、下着の汚れが生じる可能性がある、ということ。

こんなときに登場するのがブロモクリプチンパーロデル)です。抗精神病薬が「遮断」でしたが、ブロモクリプチンは「作動」する薬。下垂体に作用してプロラクチンの分泌を抑えます。

ただ、統合失調症の治療中に生じた高プロラクチン血症に対して、ブロモクリプチンの使用とに異議を唱える医師がいます。「ドパミン受容体遮断薬で統合失調症を治療しているのに、ドパミン受容体作動薬を加えるのは矛盾だ」という意見。よく「ブレーキを踏みながらアクセルを踏むようなもの」と例えられます。ドパミン作動薬を加えることで統合失調法が悪くなるかもしれない、と。私もそう思ってました。

しかし、そこで疑問がひとつ生じました。
ブロモクリプチンを併用している統合失調症を診たこと沢山あります。しかし、だからといって増悪した方を見たことがありません。もちろん、だからといって存在しないわけではないかもしれません。それにしても……。

そこで、自分なりにアレコレと考えてみました。結論としては「ブロモクリプチン」を併用することは、理論上はプラスではないかと今は思ってます。長文になりつつあるので、理由については次の記事にしたいと思います。

| コメント (0) | トラックバック (0)

2009年2月11日 (水)

抗精神病薬の分子量

新規型の抗精神病薬の分子量を添付文書を基に調べてみました。小数点以下は切り捨ててます。

ペロスピロン(ルーラン) 499
アリピプラゾロール
(エビリファイ) 448
リスペリドン
(リスパダール) 410
クエチアピン
(セロクエル) 383
ブロナンセリン
(ロナセン) 367
オランザピン
(ジプレキサ) 312

覚える必要はないもの。でも、次からの記事に関係する予定です。覚えるぐらいの勢いで把握すると、ビビッとくるかも。私は覚えてみました。

ペロスピロンギリギリ500以下。BBBを通るギリギリの値かも。

師匠(=448)エビ(リファイ)ちゃん」 エビちゃんの代わりにモハメド・アリ(ピプラゾール)でもいいかもしれません。

Ris_yotto_2ヨット(=410)に乗ったリス(パダール)」なんてイメージしやすいですね。

セロ食え(=セロクエル)ずに産婆さん(383)」 マジシャンのセロが産婆さんって似合わないな~(笑

ロナセン(ブロナンセリン)367。下線部の「ロナ」つながりで。

オラ(ンザピン)財布(=312)

何か覚え方がありましたらご提案下さい(^-^/

| コメント (0) | トラックバック (0)

2008年10月 5日 (日)

日本はたったの55%

ちらりと次のような数字がRajiv Tandon先生の話の中で出てきました。

統合失調症の治療で用いられる抗精神病薬は、アメリカで92%、イギリスで85%が既に定型薬から非定型薬に置き換えられているとのこと。そして日本はまだ55%なのだとか。

英語で言ってるのを耳にしただけですので、間違ってたらゴメンなさい。その詳しい内容もわかりません。m(_ _)m

それにしても、ほっとけない数字です。まだまだ統合失調症の治療では課題が残されてるな~、と思っているところです。まずは自分の目の前の患者さんから、ですね。

| コメント (0) | トラックバック (0)

2008年9月16日 (火)

統合失調症の再発

P-CUBEの記事の中で、統合失調症再発についてRobinsonらの報告が引用されていました。ってなわけで、自分のためにメモメモ。

急性期治療を受けた統合失調症患者の
1年以内に約50%以上が
5年以内に約80%
再発するとあります。

さらに、再発経験者の85%は2回以上再発繰り返しているとのこと。

患者さんに示すために図にしてみました。「saihatu01.pdf」をダウンロード

再発の主な原因はやはりアドヒアランスなのでしょう。そして、再発率の少しでも低い薬剤の選択も大切なのでしょうね(^-^)

| コメント (0) | トラックバック (0)

2008年4月22日 (火)

新規型とCYP

薬物の多くはチトクロームP450(CYP450)という酵素によって代謝されます。そして、このCYPは様々な薬剤で阻害されたり誘導されたり。そして、薬剤血中濃度が予定外に上昇したり低下したりしかねません。このCYPには1A22D63A4などの「アイソザイム」と呼ばれるバリエーションがあります。

というわけで、新規型(非定型型)抗精神病薬それぞれを、どのCYPが代謝するかを添付文書の記載をもとにまとめてみました。

  • 1A2:オランザピン
  • 2D6:アリピプラゾール リスペリドン
  • 3A4:アリピプラゾール ペロスピロン クエチアピン

これをメモメモ的に語呂合わせで覚えてみましょう(^-^/

「1人の俺に 2人のアリスで 3パック」

Dr1_6Girl091_6Girl091_6Milk1_3Milk1_3Milk1_3       

A2はオランザピンの
D6はアリピプラゾール+リスペリドンの
A4はPAQロスピロン+リピプラゾール+エチアピンの

なんてどうでしょ(^-^)

ちなみにCYP関連の記事に「CYPで代謝されるもの」「抗うつ薬のCYP阻害作用」がありますので合わせて考えると、診療の助けになることでしょう(^-^/

| コメント (3) | トラックバック (0)

2008年4月19日 (土)

統合失調症のDUP

イーライリリーの冊子「MARTA」に、発症してから薬物治療を始めるまでの期間(精神病未治療期間)=Duration of untreated psychosis(以下DUP)についての記事がありました。

統合失調症では、DUPが短い方がいいらしいです。

知ってました。いや、「なんとなく思っていました」が正確でしょうか。しかし、最近ではそれが断言できるだけのエビデンスをもって語られているとのこと。やっぱりそうでしたか。

Crow T.らの報告によれば……
DUP1年未満の患者群と1年以上の患者群とを、2年後の再発率で比較してみた。するとDUPが1年未満の方が優位に再発率が低かった
……とのことでした。

その他の報告でもDUPが1年未満だと、その後の経過がより良いとのこと。

Marshallらが6ヶ月後と12ヶ月後を調べた報告では……
DUPが長いほど臨床症状全体的機能QOL社会機能が悪く、寛解に至りにくい
……とのことでした。

統合失調症は早期に治療を開始した方がいいのは間違いないようです。

そして日本におけるDUPの平均は13~14ヶ月だとか。1年より長いですね。これを短くできないか、というのが最近の話題ですがなかなか難しい様です。

統合失調症が疑われる人が身近にいたら早めに病院に行かせるようにしましょう。そして、統合失調症について一般の方々にも広く知ってもらう努力をした方が良さそうです。機会があれば、どこかで講演してみたいものですね(^-^)

| コメント (2) | トラックバック (0)